アクアスクーターは軍艦島までの行き来に便利な実用マシンでした。
往復6kmの距離も1時間位で往復することが出来ました。
高島側から見える軍艦島は、まるで絶海に浮かぶ小都市。建築群は護岸で囲まれ、堅固な要塞の様にも見えました。外観に独特の魅力が漂う軍艦島ですが、上陸した内部には更なる見応え風景が広がっていました。
一時は5000名以上の住民が住み、世界一の人口密度を誇った軍艦島。1975年に無人島になって以降上陸禁止の島になりましたが、現実には無断上陸も簡単で、無人島とは言えない状況が20年以上続いていました。この島には三菱経営の炭鉱が在ったことから、三菱の所有地てもあったのですが、その後高島町の所有に変わってからは地元の瀬渡し業者を利用しても上陸まではさせてもらうことが出来なくなりました。高島町から軍艦島までは3kmしか離れていないので、過去には泳いで渡ったこともありましたが、毎回そんなこともやっては居られず、軍艦島までの行き来の手段としてアクアスクーターを使用する様になりました。
購入したアクアスクーターの型番はAS600。始めの10時間は高速運転しない様に注意書きがあったので中速で運転。まだ水が冷たかったのでウエットスーツを着用。途中でエンジンが動かなくなる可能性も考えて足ヒレも装着。上陸間際に浅い場所を通る関係から水中マスクも着用。機材や水・食料・衣類など必要なものは濡れない様な工夫を施した上でまとめて袋に詰め込み、引っ張って行く様にしました。当日の海上はとても穏やかで、釣り船も多かったのですが気にせず出発しました。高島から軍艦島まで掛かった時間は約40分。 想定した時間内に着くことが出来ました。
軍艦島上陸後は島の中を探索しながら写真など撮っていましたが、しばらくして島の中を覗き込む様に護岸の傍をゆっくりと移動する巡視船の姿に気付きました。軍艦島へ行く時の姿が相当に怪しかったのでしょう。誰が通報したものかは分かりませんが、当時は北朝鮮工作員の余韻も残っていた時でもあり、当方を工作員とでも勘違いした者が連絡したものと想像しました。巡視船の方もアパート屋上からカメラを構える当方の姿には気付いていたと思います。しかし、普段着に着替えていましたので当人と気付かれる筈は無く、慌てず騒がず堂々と撮影を続けました。
軍艦島には高島からゴムボートで行ったことが何回もありますが、風で流され易いので風のある日や時化の日には使用することが出来ませんでした。アクアスクーターを使用する場合には、風で流される心配はありませんが、時化の日と潮流の早い日・濃霧の時は用心する必要がありました。
アクアスクーターは機械なので、時々問題を起こすことがありました。最初に経験したのは、エンジンの回転が不安定になることでした。原因はキャブレター部の調整ネジの緩みと分かったのですが、エンジンの振動で緩んだものと直感。爪では回らない程度に固かったので、小型のネジ回しを持って行く様にしました。しかし、海中に漬かっている時は体もアクアスクーターも揺れるので、ネジ溝にドライバーの頭を合わせることさえ一苦労でした。この為、問題のネジ溝に長目のステンレスワイヤーを嵌め込んで半田付け。問題が生じた時は手探りでも調整可能に改造しました。使い始めて6年目には、アクアスクーターを変形させる程の落下事故を起こしました。問題の事故は、撮影を終えて戻る途中、何時もの出発ポイントへアクアスクーターを降ろす時に起きました。衝撃の大きさから完全に壊れたと思った程でした。しかし、スターターロープを引くと何事も無くエンジンは始動。ホッと安心したのも束の間、スノーケル先端を塞げは止まる筈のエンジンが止まらなくなりました。点検したところ、本体が変形した為に吸気部の接続エルボーが外れていることが判明。何とか海水を吸い込まない位置に固定することは出来たのですが、海中に入れると回転が不安定になり、今にも止まりそうな状況になりました。それでも何とか高島まで辿り付くことが出来ました。
キャブレターの吸気部とエルボーは辛うじて嵌め合わせたものの、使用中に海水を吸い込む状況も可能性として考えておく必要がありました。見栄えは悪いのですが、シリコン樹脂でエルボー周囲と接続部分をガッチリと固めることで対策。ここまでする必要があったかどうかは不明ですが、この問題個所から海水を吸い込む事故は一度も起きませんでした。
アクアスクーターは使用後のメンテナンスが欠かせませんが、劣化を止められない部品もありました。最大のものはゴム製の排気弁で、持ってもせいぜい5年と言うのが実感です。形が似ていたことから樹脂製の吸盤で代用したこともありましたが、1日で駄目になりました。排気弁には海水の逆流防止機能があるので、劣化した場合にはエンジンが掛かり難くなり、一旦止まると二度と掛からないと言う状況にもなりました。上は、点火プラグを外してメンテナンス中の写真です。
排気弁は消耗品なので、必要であれば取り寄せることも出来ます。但し、4000円と高いので、樹脂製の吸盤で代用される方も居るそうです。当方も樹脂製の吸盤で代用したことがありますが、持っても一日でした。樹脂製の吸盤も材質次第で、エラストマー樹脂製のものは実用になりませんでした。(エンジンの排気ガスで溶ける)
排気弁も新品の内はお椀型をしていますが、使用している内に形が扁平化します。この状態で使い続けると水中での始動が困難になり、一旦止まると二度と掛からないと言う状況にまで進行します。
最近経験したことなのですが、燃料コックの状況次第でも排気弁の状態が悪い場合と同様の症状を起こすことがありました。相当程度に状況が悪化するまで問題箇所の特定に至らなかったのですが、きっかけは燃料コック付近からの僅かな燃料漏れでした。微小な漏れのため気付くのも簡単ではなかったのですが、水中に入れた場合には海水を吸い込む経路になっていたのでしょう。点火プラグを外してスターターロープを引くと細かい水滴を吹き上げ、プラグの放電ギャップに水滴が付着していることがありました。プラグの絶縁抵抗を測っても1MΩ以下のときがあり、海水の飛沫を吹き上げていることが分かりました。燃料コックのパッキンは弾力性のないプラスチック製だったので、ゴム製のオーリングに替えることで問題を解決することが出来ました。
6年間使用して来たアクアスクーターでしたが、いよいよ動かなくなりました。排気弁の状況も騙し騙し使用していたのですが、激しい雨が降る中を航行中に動かなくなってしまいました。陸に戻ってプラグを外し、何時も通りの手順でメンテナンスしたのですが、回復する気配はありませんでした。原因は電装部の浸水と分かったのですが、前日に解体した後の組立てに問題があったらしく、オーリングが一部潰れる様に変形していました。その後、考えられる手は尽くしましたが、以前の状況にまで戻すことは出来ず、2台目のアクアスクーター「AS650」を買う嵌めになってしまいました。
軍艦島までの行き来に活用したアクアスクーターでしたが、年間20回程度使用していたので、6年間で120往復はしていることになります。1往復が約6kmに相当しますので、700km分の行き来に使用しています。 燃料満タンの場合には2時間走行出来たので、燃料切れの心配はありませんでした。それでも余裕があるに越したことは無く、常に満タン状態で出発する様にしていました。
アクアスクーターは機械なので時々トラブルを起こしますが、始動出来ても途中で止まることもあり、一番困りました。滅多に無いこととは言え、陸から遠い所で動かなくなった場合には押して進むか、アクアスクーターを捨てて泳いで戻るしか方法が無くなってしまいます。アクアスクーターを捨てる事態にまで至ったことはありませんが、数100m程度押して行くことは何回もありました。
一度、高島と中ノ島の中間付近でエンジンが動かなくなったことがありますが、戻るにしても進むにしても750m余りの距離を押さねばならず、最悪の状況でした。あと500m・400m・300mと、目測で残距離を計算しながら高島を目指しましたが、予定時間を2倍程オーバー。20分もあれば辿り着ける距離を、50分も掛かってしまいました。アクアスクーターを押して進む場合でも、90分あれば3km進めることを確認していたので、今回は特別運悪く、潮流が速い時間帯に事故っていたと分かりました。
山の天気はすぐ変わるとは良く言われることですが、海の状況変化も速い場合がありました。出発した午前中は凪でも午後から時化ることは珍しく無く、海面に白波が立ち始めると殆どの釣り舟が姿を消しました。この様な状況下で軍艦島を後にすることも多かったのですが、上写真の様な状況下でも体は水面上に出ている為、エクステンションスノーケルを継ぎ足す必要までは感じませんでした。
時化の日やうねりの大きな日、台風が接近する直前に行くこともありましたが、護岸に沿って潮が走っている場合には上陸も簡単ではありませんでした。走って来る潮の大きさとタイミングを見計らって突っ込むのですが、失敗した場合にはスノーケル先端から大量の海水を吸い込んでエンジンが止まることがありました。上陸後、始動を試みても始動する気配は無く、一時は押して戻ることも考えた程でした。点火プラグを外す道具も持って来ていなかったので本当に困りました。肩がだるくなるほどスターターロープを引いても、始動する気配は全くありませんでした。スターターロープが切れた場合には問題が更に大きくなると考え、一旦休憩。点火プラグの放電ギャップに海水が付着している可能性が高いと考え、海水を飛ばすイメージでアクアスクーターを叩いたり蹴ったりを繰り返しました。あくまでも緊急避難的な思い付きで試したのですが、結果はOKでした。今までかかる気配も無かったエンジンが、何事も無かったかの様に簡単に始動してしまいました。この日の経験以降、点火プラグを取り外す道具も持って行く様にしました。その後も、点火プラグを外さざるを得ない状況には何回も遭遇しましたが、全て解決することが出来ました。
海中にはクラゲや海藻など、いろいろなものが浮遊。ビニールや竹・木材も漂っていることがありました。海水の吸い込み口には簡単なフイルターが設置してありますが、走行中に塞がるとエンジンの回転が重くなりました。時にはカメラの紐を吸い込み、エンジンシャフトに巻き付いて動かなくなったこともありました。何とか問題の紐は取れたものの、沖合いで同じ様な状況が起こった場合には困るので、スクリューガードを簡単に外せる様に改造しました。
アクアスクーターを始動するにはスターターロープを引く必要がありますが、見掛けは丈夫そうに見えても簡単に切れてしまいます。実際購入して日も浅いAS650ですが、1年(22回使用)でスターターロープが切れてしまいました。肝心なときには何時でも交換できる様に予備ロープを携行していたので助かりましたが・・。ローププーリーを外して見ると、プーリー溝の中で互いに締め付け合う様にロープ同士がきつく噛み込んでいました。エンジンを始動する時にひどく引っ掛かる感じがあったのですが、この噛み込みが原因と思われます。仮に、スターターロープがプーリー溝にきっちり嵌る太さだった場合にはこの様な問題は起きなかったと思いますが・・。このこともあり、予備ロープは若干ですが径の太いものに交換しました。
時速6kmとは言え、アクアスクーターで長時間引っ張ってもらうには辛いものがありました。極端に言えば鉄棒に長時間ぶら下がっている様なもので、手がだるくなりました。この為、10分間に1回程度はスピードを落として休む必要がありました。この問題については、アクアスクーター本体と自分の体を紐で繋ぐことで解決。片手運転も可能になったことから、余った片手でのカメラ操作も出来る様になりました。
軍艦島までの航路は釣り舟の行き来する航路でもあるので、存在に気付いて貰える様にスノーケル先端には目立つものを乗せる様にし、大雨の日にも雨水を吸い込まない仕組みにしました。後方確認も欠かせなかったので、バックミラーも取り付けました。海上濃霧で現在位置が分からなくなったこともあったので、必要に応じてGPSも持って行ける様に改造しました。2009.12.24 カウンター設置 http://ippatsu.net/ROBO/ 管理人 |